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一流をめざせ

2013年3月25日

 3月は旅立ちの月である.情報文化学部も無事,自然情報学科39名,社会システム情報学科37名,合計76名の卒業生を送り出すことができる.掛け値なしに本当に嬉しいと思っている.私は,この3月で3年の学部長の任を終えることになる.卒業生の皆に言葉を贈ることができるのも最後になるので,少し話をしておこう.
 この文章のタイトルは「一流をめざせ」である.「一流」とは何だろう.いろいろな人に出会うと,何となく一流だなあ,大物だなあと思う人がいる.もちろん一流の必要条件としては,その分野(研究でも仕事でも趣味でも何でもよい)に関する知識やスキルを十分に(自分よりはるかにたくさん)持っているということがある.ただ,それは「一流」の必要条件であって,十分条件ではない.知識やスキルはいっぱい持っていても,何かが足りないために「三流」という感じしかしない人もいる.では,さらに必要な「一流」の条件は何だろう.
 私の専門分野で恐縮だが,心理学,認知科学(情報学や言語学を含む)の分野で,この人はすごいと思う人に何人か出会っている.そういう人たちに共通しているのは,「偉そうな」感じを与えないことである.私が若いときに出会った海外の高名な研究者は(もちろん私のことは知らない),こちらが初歩的な質問をしても,そんなことは知らないのかといった態度は一切なく,丁寧に答えてくれた.また別の研究者は,私がいくつも議論の種を準備していったこともあるが,忙しいにもかかわらず1時間以上議論の時間を作ってくれた.他にもこういう経験は多い.つまり,「一流」の人は,「偉い」と言うことは万人が認めることであり,自分からそういう態度を見せる必要は一切ないのである.そのため,自分と違ったもの(アイデア,トピックでもいいし,若いときの私のような初心者もそうである)に対して,同じ目線で議論する余裕がある.そのような態度が,型にはまらない議論を創発し,おもしろい新しいアイデアが生まれることになって,さらに高名になることとなるのだろう.こういう人たちは,型にはまった思考ではなく,自分と違うことや新しいと感じることへの敏感さと好奇心を持ち合わせているように思う.そういう人たちが示す一つの特徴が「偉そうでない」ことなのである.
 さて自分が一流になろうとすればどうすればいいだろう.一つの方法は,「一流」の人に出会うことである.これから,社会,あるいは大学院に進んで,新たに多くの人に出会うことになる.その中には,必ず一流の人がいる.そういう人を敏感なセンサーで見つけて,ぜひ多くのことを学んでほしい.必ず役に立つ.特に情文の卒業生は,型にはまらない思考,センスを持ち合わせている人が多く,「一流」の人に出会う可能性はきっと高い.
 30歳になったときに振り返ってみよう.自分は「一流の人」に出会ったかと.もしそういう人に出会っていれば,幸せは約束されている.もしその時点で出会っていなかったら,センサーがちょっと鈍感だったのだろう.でも心配することはない.きっとそういう人はあなたのまわりにいる.もう一度センサーを磨き直して新たな10年を過ごしてみればよい.
 上記の意味で皆さんが幸せになれば,日本の将来は心配はない.ぜひ「一流」をめざし,活躍してほしい.未来のgood newsを待っている.

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