イベント

情文カフェ第23回:「ナットウの起源をさぐる旅」

2014年1月7日

情報文化学部はいわゆる理系・文系両方の教員が集まっているところですが,それはとりもなおさず多様な領域の相互作用の中で生まれる新たな発見のシーズが隠れていることを意味しています.そのようなシーズを顕在化させること,また話し手,聞き手双方がもっているセレンディピティをも顕在化させることを目指して,開いているカフェが情文カフェです.

原則として第4水曜日18時から,情報文化学部(全学教育棟北側)2階Phononで行っています.参加自由なので気楽にどうぞ.

日時:2014年1月22日(水),18時00分より
場所:情報文化学部(共通教育棟北側)2階Phonon

スピーカー:横山 智 教授(環境学研究科)
タイトル:「ナットウの起源をさぐる旅」

概要:
北海道で生まれ育った私は、幼い頃から普通に納豆を食べていた。疑いもなく納豆は、日本だけに見られる食品だと思っていたし、納豆の起 源は日本だと思い込んでいた。しかし、大学の講義で習った「照葉樹林文化論」では、照葉樹林帯(温帯の常緑広葉樹林)に共通に見られる文化要 素の一つとしてナットウが挙げられていた。納豆を食べ始めて20年以上も経ってから、日本以外にもナットウがあるということを初めて知ったの である。そして私は、2000年に東南アジアのラオス北部で焼畑の調査をしていた時に初めて海外のナットウと出会った。町の市場で袋に小分け されて売られていた茶色い発酵大豆を見て、すぐにそれがナットウであることを確信した。私にとって、東南アジアのナットウは、本の中だけに登 場してくる得体の知れない食品であったが、実物が目の前に現れると、がぜん興味が沸いてきた。一袋購入し、意を決して口に一粒入れてみた。発 酵が進み過ぎていたのであろうか、アンモニア臭が強かった。粘りはまったく無いが、味は納豆である。それは、決して美味しいものではなかったが、探せばもっと美味しいナットウがあるはずだという期待を持たせるには十分な味であった。そして、私のナットウを探す旅が始まったのである。

 

cafe23

参加者の感想

今回はナットウの起源というユニークな題材でした。先生の概要にもある通り、私も講義を聞くまでナットウはずっと日本発祥の食品だと思い込んでいました。今まで意識したこともなかったナットウの奥深さを学ぶことができました。

元々ナットウの始まりがどこであったかという疑問について、二つの仮説があるそうです。一つは一元論で、世界で様々な種類のナットウが作られていますが、これらの起源は一つに集約されるという考え方です。中尾佐助氏が唱えた仮説では、中国の雲南省が中心地だとされていました。これに対し、複数の地域で同時多発的にナットウが生み出されたとする多元説も叫ばれています。石毛直道氏は1985年のアジア無塩発酵大豆会議でこれを主張しました。現在でもどちらが正しい説なのか解明できておらず、納豆菌の化学分析が進められているそうです。そこで今回はナットウの伝搬と起源を明らかにするため、東南アジア・ヒマラヤを調査されたとのことです。

調べた結果、各地でナットウの製法が異なることが分かったそうです。タイ・ミャンマー・ラオスでは「トゥア・ナオ」と呼ばれる糸を引かないナットウが作られていて、その形状が粒状・引き割り状・せんべい状の3種類に分けられるとのことでした。また、種菌として利用する植物にも違いがあり、チークやフタバガキの葉を利用する地域、シダやイチジクの葉を利用する地域、そして植物を利用しない地域があるそうです。このうち、シダやイチジクを利用する地域のほとんどが粒状のナットウを製造しており、一方、チークやフタバガキを利用している地域と未使用の地域の多くがせんべい状に加工しているという説明でした。つまり、加工方法と利用する植物が共通する地域では、起源も同一であるという仮説が立てられます。さらに、北タイとミャンマーでは加工道具も似た形状をしていることが分かったそうで、この仮説は信憑性がありそうです。しかし、シダやイチジクを利用した地域では、他にクズウコン科の植物を利用している例もあり、研究の余地があるとのことでした。また、ヒマラヤのアルナーチャル地方では、ここでしか利用されていない植物が多く発見され、起源の分類に対する位置づけがまだできていないそうです。

実際にナットウを生産している東南アジアや南アジアの現地を調査することで、このように具体的な仮説を立てられたことに感動しました。同時に、東南アジアなどだけではなく日本のナットウの起源も知りたくなりました。お話の中で秋田県にナットウ発祥の地と書かれた石碑があるとのことだったのですが、今回の調査地で作られているナットウと関係があるのでしょうか。私自身も海外のナットウを是非食べてみたいと思いました。
(自然情報学科:花木真美)

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