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情文カフェ第24回:協調学習を数理モデルで解析することはできるのか?

2014年2月27日

情報文化学部はいわゆる理系・文系両方の教員が集まっているところですが,それはとりもなおさず多様な領域の相互作用の中で生まれる新たな発見のシーズが隠れていることを意味しています.そのようなシーズを顕在化させること,また話し手,聞き手双方がもっているセレンディピティをも顕在化させることを目指して,開いているカフェが情文カフェです.

原則として第4水曜日18時から,情報文化学部(全学教育棟北側)2階Phononで行っています.参加自由なので気楽にどうぞ.

日時:2014年3月5日(水),18時00分より
場所:情報文化学部(共通教育棟北側)2階Phonon

スピーカー:中村 泰之 准教授(情報科学研究科)
タイトル:協調学習を数理モデルで解析することはできるのか?

概要:
物理学の研究領域の一つに,「スピン系の統計力学」というものがあります。それは,もともと,物質の性質を解明するための理論として発展してきたものですが,近年,情報科学,社会科学など様々な分野にも応用されています。最近,その手法を教育・学習分野に適用するという試みが,米国物理学会のWebサイトで「The Physics of Teaching Physics」というタイトルで取り上げられました。これまで,教育・学習分野の研究スタイルは,様々な実践データから,有効な教育・学習方法を経験的に見つけ出すという方法が主流でしたが,その研究の中で,学生同士が議論することにより学習を行う「協調学習」の有効性が指摘されています。しかし,どのような学生同士をグループとして組ませるのか,また,適切な人数は何人程度か,さらに,どのような難易度の問題が協調学習に適切なのかに対して指針を与える理論のようなものはありません。先の「The Physics of Teaching Physics」で紹介された研究は,それに対して回答を与えることのできる理論の一つですが,その後の研究を含め,まだまだ,スタート地点に立ったという段階から抜け出せていないようです。このトークでは,協調学習の数理モデルに関する最近の研究を紹介するとともに,「協調学習を数理モデルで解析することはできるのか?」について考えてみたいと思います。

 

cafe24

参加者の感想

今回の話題 ”協調学習を数理モデルで解析することはできるのか” は数学が苦手な学生ならタイトルを見るだけで聞くことをやめてしまうそんなタイトルだ。「協調学習」とは、何かを学習するときに先生から授業を受けるだけではなく、生徒間同士で議論することにより理解を深めることで学習効果が高くなるという、おもに教育学部が研究している内容である。それを数理モデルで解析しようというのだ。とても情文らしいと思える内容である。

まず中村先生がどのようなことを研究してきたのかという話であった。先生はスピン系の統計力学に関することを研究してきた。そのスピン系とはなんなのか。スピン系の統計力学とはある作用が繰り返し行われることによって、どういう結果になるのかということを考える手法である。例の中に上げられていたのは、あることを記憶するとは、イベントが脳の神経に繰り返し刺激をおこし、その総和がある数値を超えると記憶する、と言ったふうに定義することによって記憶のメカニズムを数理モデルで表すことを可能にしたりするのに使われている。つまり今回の話は協調教育を数理モデルで表すためにどのようにこの考え方を使えばいいのかということである。今回は生徒間同士の間で行われる議論などによる刺激を学習レベルの上昇と関連付けていた。

この研究は過去にBordogna等がすでに取り組んでおり、一応の数理モデルは提唱されている。しかしそれは数理モデルを計算している間に誤っている部分とデータが曖昧な部分があるという。だからここで新たに解析するために踏む手順としては
知識レベルの変数はどのように取るべきか?
時間スケールをどれだけ取れば良いのか
実データとの比較・検討
これらのことをしなければならない。しかし知識レベルの変数をうまくとれないことが実データを取ることを困難にし、研究が進んでいないという。先生に紹介された研究例を見てみても現実では起こりえないような結果が出てしまっていて未だに数理モデルで解析することは出来ていない状況である

今回学部生として参加した僕の一番の収穫は、未知のことを研究するってこういうことなんだということである。今まで受けてきた講義などでは既に明らかになっていることを記憶したり理解したりすることが大部分を占めていた。しかし協調学習を数理モデルで解析するというのは世界的に見ても研究が進んでなく、うまい数理モデルがない状態から自分たちで組み立てなければならない。一つ数理モデルを作ってはまた工夫をし、ときには全く違うものを考える。そうやって一歩ずつ進んでいくのを感じられた。研究とは、どういうことなのかと疑問を持っていた僕には今回の情文カフェはいい刺激になった。
(自然情報学科:小川僚太)

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