インタビュー
一つではなく、二つやる。(2)
—社会システム情報学科長 高橋 誠
2013年1月7日
―先生から見た情報文化学部はどうでしょうか。
たぶんね、規模が圧倒的に小さいでしょ。そういう意味では、他の学部に比べると、小さいことは小さいんだけど多様だっていうのが特徴だよね。文系だけで話しますとね、他の学部は何となく一本これを勉強するって言う筋っていうかストーリーがあって、たぶんそれしかやらないんだよね。社会システム情報学科でいえば社会地域環境系以外にも、心理学であったり、経済学であったり、法律学であったり、最終的な何か一つの学問の見方みたいなものに最初っからそこへ一本でいくんじゃなくて、たぶんふらふらしながらそこへ 最終的にたどり着くっていう感じですよね。
1・2年生のときにみんなが共通して持たないといけないような授業あるでしょ。あれは情報文化学部の特徴だっていうんだけれども、実は情報文化学部というよりはむしろ学問を学ぶための基礎なんだよね。だからあの授業は他学部でも成立する。まあ中身はちがうんだけれども。ああいうことを文系の中で多様なのにやってるのはうちだけなんだよね。そういう点で言うと、狭いとこに最初っから放り込まれてひとつのとこでぐーっといって、もちろんそれはそれでかまわないことな んだけど、そこを破るためにはすごく努力しないといけないのね。隣りの学問は近かったりするのに共通のものを考える基礎教育は普通はやらないんだよね。情報文化学部はカリキュラムでいうとそういうところが違うんだよね。
学問の枠を先に考えてやることは、プロはそうしますけど、たぶん学生はあんまりそういうことは気にしなくて、何か知りたいこととか見たい現象みたいのものがあって、それに対してどうやってアプローチするかって考える方が普通は先でしょ。先に枠を考えちゃうともしかするとつらいかもしれないよね。文系の場合はもうちょっとベーシックっていうか、みんなが共通するものを勉強した後で、情報文化学部みたいな形をとる方が本当はいいのかもしれないね。
―情報文化学部は、いろんな視点を持てるという一方で迷ってしまう可能性もありますよね。
学生は迷うよね。すごく迷うと思いますよ。これは僕の個人的な考え方ですけど、たぶん何か一つの見方は身につけないといけないだろうね。そういう風に考えたら情報文化学部を理解する上で、二つやるってかんがえたらいいんじゃない。学生はだいたい一つしかやらない。情報文化学部は、情報学は全員がやらないといけないので、まあどんな情報学は別として、あとひとつやる。それをかなり専門にやる。だから専門が二つだって理解した方がいいんじゃないの。それが文化学の中身なんじゃないの。文化学って学問ないからね。 ただ学生のみなさんが思っている以上に他の学部も多様だよ。だけど他の学部に行った人はたぶん一つの研究室の中でずっと育つんだよね。
―先生が学生時代に打ち込んだことやおすすめのことがあれば教えてください。
あんまり何にもしてなかった感じだよね(笑)。オートバイはずっと乗ってたかな。確か250ccだったかな。部活動も幽霊部員みたいだったしね。今の学生の方が勉強するよね。なんか勉強しないといけないような強迫観念があるでしょ。それは僕らの責任なんだけど。まあでも名古屋大学は比較的にすごいのどかな雰囲気があってさ、何かに追われて勉強しなきゃいけないって、もちろん単位は取らければいけないんだけど、そんな雰囲気あんまりないよね。…だからおすすめはありません(笑)。
ぼくらの立場でいうとね、高校までの勉強の仕方と、大学以降の勉強の仕方って違うんだよね。高校までは生徒っていうでしょ。大学は生徒っていわないじゃない。たぶんね、好きな勉強しなさいっていうのは大学以降に当てはまることよ。世の中でこれだけは最低限知らなければならないことってたぶんあって、例えば、日本っていう国が三権分立でさ、国の政治がこういう風に動いて て、ここの部分でこんなことが決められててっていうのは、大学に行く人も行かない人もこの国やこの世界で生きていくためには絶対に知っとかなきゃならないことなんだよね。だから、高校までは自分で学問を選ぶ立場にないんじゃないかと思うんだよ。
―与えられる側ということですね。
うん、実際問題そうなっているし。だから泣くほど勉強したらいいと思うけどね。楽してするするっと大学に入ろうじゃなくてさ。受験科目だけやる感じでしょ、何となくね。今の若い人はって言い方あんまり好きじゃないけど、たぶんそれは今の若い人に問題があるんじゃなくって、今のカリキュラムを作った側に問題があるんだけどね。
でも一生懸命勉強した分野のすごくどうでもいいようなことと、「えー、そんなことも知らないの」っていうことが同じ人間に同居してる感じだよね。それはいわゆる大学の偏差値みたいなものとあんまり関係ないよ。まあ少なくとも名古屋大学入るような人は、全部やりないさいよって思いますけどね。全部勉強してらっしゃいって。大学にきてから選びなさい。そんな高校の時から大学生の真似しなくてもいいと思いますけどね。
―確かに大学では自分の好きなことを勉強できるけれど、高校の頃って自分で好きな学問見つけて楽しいとか感じることがないですよね。
大人になってからは何か特別な動機とか強い経済的なモチベーションとかがないと一生懸命勉強しないじゃない。そうやってわがままいう前に、意義があるとかないとかじゃなくて、たぶん高校生の段階でやらなきゃいけないことって多分あると思いますけどね。
―では、最後に情報文化学部に入学する高校生に対するメッセージをいただないでしょうか。
あんまり先を見ないで今やるべきことやりなさいってことですよね。背伸びなんかしなくて、働きたいなら働けばいいし、また勉強したくなったら大学に来ればいいし。たぶん大学に来たら来たなりのものがあると思いますよね。だけど一方で、社会に出たら社会に出てその4年間分それなりに大学生が経験できないことをやっているはずだよね。だから価値を一元化しないことかな。抽象的でごめんなさい(笑)。
何しなさいこれしなさいってのは、自分で考えなさいってことだよね。縁があったらその縁を大事にするってことで、流れで生きるってことは当然ある。縁あって名古屋大学の情報文化学部にもし来ることがあれば、その縁を大事にすればいいと思うし、偶然で他の大学にいけばそれはそこでそういう縁を大事にすればいいんじゃないかって思うんだけどね。
高橋先生のインタビューは以上です。