インタビュー

一つではなく、二つやる。(1)
—社会システム情報学科長 高橋 誠

2013年1月7日

takahashi-profile

高橋 誠(たかはし まこと)教授

新潟県出身。新潟大学教育学部中学校職員養成課程卒業後、

名古屋大学大学院文学研究科史学地理学専攻 単位取得、

名古屋大学文学部、長崎大学教養部を経て

現在、名古屋大学情報文化学部准教授。

農村地域論や都市化、近代化に関する地域社会研究から、

現在では自然災害についての研究も行っている。

-先生の研究内容を教えてください。

都市化や社会変動の研究をしていたんですが、最近は災害の研究をしています。自然災害ってあるでしょう?自然災害が地域とか社会にどういう風に影響を与えて、また社会が自然災害を引き起こしたり大きくしたり、あるいは逆に小さくしたり、そういうことを考えているんですけどね。特に2004年にスマトラ島で大きな地震と大きな津波があって、あれが史上2番目の規模って言われているんだけど、人数でいうと世界中で25万人くらい亡くなっているんですね。たぶん今回の東日本大震災は被害額でいうとそっちより大きいと思うけど。で、そこの一番大きな被害のあったスマトラ島の一番北のアチェっていうところに7年くらい通っているのかな。

-今もですか?

今も一年に1回か2回くらい行っていますよ。もう7年経ったら何にもやることないって普通は思うかもしれないし、実際に災害の痕ってあんまり見えなくなっているんだけど、まだなんとなく元の状態が分からない。特にその地域は軍事紛争でゲリラとかいっぱいいたとこなので、元の社会の状態が災害が起こる前に、もうかなりぐちゃぐちゃな状態。それが災害によってむしろ逆に軍事対立は終わったのね。だけど一方で、町自体が壊されちゃっているでしょ。だからそれが7年やそこらではたぶん分かんないんだよね。自然科学だと災害ってほんとに一瞬の出来事で、例えば断層がずれたから地震が起こるとか、何年もそういう異常な状態が続くっていうことはあんまりないんだけど、社会科学的にいうとたぶんだらだらと影響が続くんですよね。

DSC_5950村って一番真っ先に思いつくのは、農業やって暮らしているとか、そういう周りの土地や環境とかと付き合いながら生活の糧を得てるようなイメージあるでしょ?そうやって暮らしている人はたぶん人口の数%くらいしかいなくって、多くの人は公務員だったり、会社員だったり工場労働者だったり、観光で食べてたりしてるから、そういう意味では、周りの自然とか環境とかと関わっているように見えるけど実はそんなに直接は関わっている訳じゃないのね。

だけど災害みたいなのが起こると周りの環境の中で暮らしているっていうことを人はすごく意識して、どうやってつき合うかってことを一生懸命考えなきゃいけないので、そういう意味ではつながっていると思うんだけどね。ここ5、6年調べてた日本の村の話はちょっとお休みしていてインドネシアの災害の方にシフトしているんだけど、根っこの部分はつながっていると思うんだよね。

-先ほど現地に行くと仰っていましたが、フィールドワークで見えてくることはありますか。

そこ行くことで感じることや学ぶことっていうのはあるんだろうな、っていうのはひとつですね。僕らは外部の人間で実際に被災している訳ではないからさ、想像するしかないんだけど、書かれたものとか映像とかではとても難しいんだよね。フィールドに行く意味はおそらく壊れたものを見ながら、どんなことが起こったのかっていうことを想像したり、メディアを通して伝えられることで分かることもあるんだけど、人と話をしてその人がその時どんな経験をしたかっていうのも直接自分たちで聞く。それは普通の社会を見ているよりも壊れたような社会を見るときっていうのは特に非常に重要なんじゃないかなって思う。

もう一つは、災害って実は一つの角度から見ても分かんなくて、いろんなところに物事が及ぶっていうのかな。実際は自然現象だから、自然のことも知らなきゃいけない。なんで起こったのかとか、どういう風に波がきたかとか、どんな風に地面が動いたかっていうことが分からないとだめだよね。それと家の造りがって話になってくると、インドネシアなんか日本に比べると圧倒的に弱い家なんだけど、僕らが見ても弱い家くらいにしかわからないでしょ。そうすると建築と土木の専門家みたいな人も一緒に行ってもらわないといけない。それから、社会っていっても、経済の方から見るのかそれとも文化の方から見るので違う。

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なので、共同研究みたいなかたちや、その現地の人や現地の研究者とも協力しないといけない。いつも一緒に行く必要はないけど、ある時期一緒に行って同じ壊れたものを見てそれぞれの人が想像するのもすり寄せながら、どんなことが起こったのかって言うイメージを共有しなくちゃいけない。そういうのはたぶんフィールドでなくてはできないし、災害の共同研究するときは重要だと思う。

 -確かに社会地域環境系の人たちはフィールドワークによく行くイメージですね。

そういうトレーニングを積ませますよね。ただ、正しいフィールドワークのやり方は本にはいっぱい書いてあるけど、自分のやり方をつかむことが大切。もちろんセオリーはあるんだけど、社会地域環境系のフィールドワークは、個人やグループが自分のテーマを決めて実際に現場に行って同じものを見たりして、いろいろ想像したり人に話を聞いたりながら自分のフィールドワークのやり方をつかむっていうのかな。それはたぶん正しいやり方ではなくて、また別の現場に行けば修正されるものだよね。

それから大学の中でフィールドワークと言ったらお勉強みたい思うかもしれないけど、たぶん世の中に出ると、どんな仕事に就いてもそういう現実と向き合って人と話をしたりと、それは高邁なことではなくて日々の暮らしの中で常にやってることでしょ。卒業しちゃえば学問の問題ではなくて世の中の中で生きてくる訳だから、そういうときに自分がベースに持っているフィールドワークのやり方っていうのかな、自分のやり方みたいなものが実際の生活でも職業の中でも、直接は生かされないかもしれないけど、もしかするとものを見る目を養っているということがあると思うんですけどね。もちろん専門家になる場合は基礎的なトレーニングって言う意味があると思うんですけどね。

インタビューの後半はこちらです.

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