インタビュー
「楽しい」に挑戦すること。(1)
学部長の任期を終えるにあたって―情報文化学部長 川口 潤
2013年3月4日
川口 潤(かわぐち じゅん)教授
京都府出身。
京都大学教育学部、大学院教育学研究科
にて心理学を学ぶ。
奈良女子大学、愛知県立芸術大学にて教鞭を執り、
現在は名古屋大学大学院環境学研究科、
情報文化学部教授、専門は認知心理学。
今年度で学部長の任期を終える。
―学部長の経験を踏まえた上で、情報文化学部についての考えを教えてください。
情報文化学部は文理融合ということで、文系のようであり文系ではない、理系のようであり理系ではない、というところが特徴です。もしかしたら訳が分からないと言われるかもしれないけど、今後日本でどういう人が活躍するかと考えれば、そういった視点を持つ人が活躍するはずなので、そういう方向に向かっていけるようにしたいです。
でも実際に今ある学部の構成がその目標に向かってベストかと言えばもう少し改善したほうがいいところもあるけど、大学のシステムがすぐに変えられる訳ではないので徐々に進めていっています。目標は文理の間の混ざったところをさらに進めることで、それは絶対にいいことだと思います。
文と理がまたがっているよく分からないことをやるよりも、これをやったら答えが出るということをやったほうが効率はいい。でも10年後20年後は日本もどうなっているかわからないよね。スマートフォンにしても、10年前もアイディアはあったけど商品としては出てはいなかった。でもそういう新しいことをする時に「私はこれだけしかできませんー」と言っていては、絶対にその挑戦に太刀打ちできない。そういった自分の領域を自分で限定しない人が育ってほしいと思う。
文理融合は中途半端という意味ではなく、いろいろな領域に気軽に飛びまわることができるという方向性なんだよね。これは逆に言えば、いろいろなとこに飛び立っていくために武器は必要だということ。だって、素手で飛び込んでもいろんな特徴や特技を持った人の中で埋もれてしまうから、自分は「私はこれができます。」というのを持ってないとだめなんですよね。「私はこれができます!」と「いろいろな領域をまたがる」ということは、一見逆みたいな感じがするけれど、「私はこの領域でこれができます」というのは身につけないとだめなんだよね。
そのためにも、情報文化学部の場合は、情報系の基礎科目を全員がやって、それぞれの分野では技術と知識も身につける。だから情報文化学部の学生には、他の関連領域にも飛び回れるような人に育ってほしいと思っています。今後長いスパンで見るとそういう人が絶対に重要になってくるはずなんだよね。
例えば、情報文化学部だからなにか情報系の新しいシステムやアプリケーションを作りたいということで集まった時、そこにはいろんな人が集まると思う。その時にプログラミングの専門家がいれば効率が良い。それはとても重要だけど、そういう専門家ばかりいてもだめなわけ。一番重要なのは、全体がある程度わかって、そこで自分の持っている意見を、知識を基に発言できることだと思う。
そこに自分がどう貢献できるか、ということになってくると、広い知識を持って他の人ができないことをやるということが大事になってくるんだよね。単に広い知識ですべてが中途半端だと、そういう場でぽつんとしたままになってちゃんとした意見が言えないので、自分の武器も身につけていかないといけない。
―では、これからの情報文化学部の方向性としてはどう考えていますか。
情報文化学部ができて20年近くになるのかな。基本は「文理融合」ということで、ミニ文学部でもミニ法学部、ミニ工学部になっても意味がない。実際に文理融合である人材は必要とされているし、大学院へ行って研究ということを考えてもそういう領域は非常に重要視されてきているんだよね。何か問題があった時に簡単な答えはなくて、いろんな手法を使ってとにかく解いてみるということをやらないといけない。そういう時に、分野は文系だから理系だからとかではなく、使えるものは使っていくという方向に教育も研究も向かっていくべきだと思う。
長いスパンで見れば、大学という高等教育に関わる状況はかなり変わっていくことになる。特に学生が少子化で減っているわけだし、大学自体がどういう特徴を出していくかというのは日本全体で重要になってきている。その流れの中で情報文化学部がどういう特徴を進めていくかって言うのはたぶんもう一度考え直さないといけない時期が来ているとは思います。
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