インタビュー

軸足をもって幅広く見渡せるような人に。(2)
-情報文化学部長 神保 雅一

2013年9月9日

インタビュー前半部分はこちらです。

 

―では次の質問に行かせていただきます。情報文化学部の意義やこれからについて、お聞かせください。

zhinbou4情報文化学部ができて今年でちょうど20年なんですよね。20年前にこの情報文化学部を作ろうという考えはすごい発想だったと思います。いわゆる専門家ではなくて、いろんな幅広い教養をもっているような専門家を作りたいっていう発想でできたわけですよね。それが20年たってみると、就職を考えてみても悪くないし、初期の卒業生が40歳くらいになって社会で活躍しているわけですよね。いろんなところで活躍していて、社会の中でだんだん、情文の卒業生が増えていって、ますます幅広い専門性を持った人が必要になってきていると思うんです。教育再生実行会議など、政府の諮問機関で最近言われているのが、先ほど言った汎用性のある人材の育成で、例えば、私はこれが専門なので、こっちについては分かりません。という風に、会社の中で言うわけにいかないじゃないですか。なので、この仕事をやれ、プロジェクトをやれと言われたら、そのプロジェクトの中で、自分の知っていることはしなくてはいけないし、あの人はこの分野の専門家だなっていう具合に人を連れてきて、一緒に話ができなきゃいけない。話が通じないっていうのは仕事にならない。そういう意味では、自分が専門家じゃなくても、この辺は少し知っているよ、こっちも少しは知っているよ、というようなことができる人が望まれている。情文ってまさにそういう人材を育てる学部ですよね。ですので、今後もますます社会にとって重要な学部になっていくと、僕は思っているんですよね。ですから、今の学生の人もそうだし、卒業した人たちも、情文でどういう人間に、どういう人材になろうと教育を受けてきたのか、自分はどうなりたいのか、ということを考えてみてもらいたい。そして、汎用性があって専門を持っているような人材で、コミュニケーション能力も高い人を目指してほしい。人間がお互いに話をしたり、プロジェクトを進めたり、相手の企業と交渉をしたりっていうのは絶対コミュニケーション能力でしょ。それが、コミュニケーション能力が高い人、別に語学が優れているっていうことが、本質的に重要なことではなくて、自分の言いたいことを相手に伝えられる能力が大事。だから、そういう学生が巣立って行ってくれれば、情文の意義がますます高まって来るんじゃないだろうか、と思います。

情報文化学って何なのかっていうのは実は僕らもよく分からない。正直言ってね、情報科学というのもそういう意味ではそうかもしれないし、環境学というのも、じゃあ、環境学とは何なのか?と言われて、一言では答えづらいですよね。そういう風に、情報文化学って何なのかって言うのは答えづらいのだけれども、情文の教員はいろんな専門を持っているんですよね。その教員が育った環境というのは情文のようなところじゃなくて、いわゆる旧来の学問領域で育ってきたわけで、そういう人たちが情文で一堂に会してね。「人種のモザイク」とか、「人種のるつぼ」という言葉があるよね。それと同じで、「学問のモザイク」みたいなことがここで起こっているわけです。だから、情文は人種じゃなくて、「学問のモザイク」だと思っていて。学問のモザイクの中で、人がお互いにいろんな自分の専門を持ちながら、お互いに話をしていって、新しい発想が出てくる、同じ専門分野の中にいると、どうしても方向が、ベクトルがみんな同じ方向に向いているので、新しい発想が出てこない。だから、そういう意味で、非常に良い環境だと思います。きっと、学生の皆さんも、この先生はこういう発想法、あの先生はこういう発想法という風に、いろいろな発想法を見ることができる。で、こういう風な見方も、ああいう風な見方もある、という風に多面的な見方をすることができる人になってほしい。

―コミュニケーション能力というのは、リーダーシップもですか?

そうですね。コミュニケーション能力が高くないと、リーダーシップを発揮できないじゃないですか。やっぱりコミュニケーション能力の高さが、その人のリーダーシップの根本になっているっていう気がしますね。リーダーシップというのは、ある意味で生まれながらにして持っている人もいるんだけれど、そういうコミュニケーション能力を身に付けることによって、リーダーシップが発揮できるということもある。だから、コミュニケーション能力を身に付けて、プロジェクトを引っ張っていける、周りを引っ張っていけるような人になってほしい。

―情文に入るときは、文系と理系で分かれますが、専門は一緒に履修したりして、理系的な考えを持つ人たちと、文系的な考えを持つ人たちが一緒に学べるっていうのは……?

非常に良いと思います。普通ありえないでしょ。日本の中でもそんな学部は多くないですよね。貴重な学部なので、一生懸命、いろいろなことを吸収していってほしいなと思います。

―最後となるのですが、高校生や学部生に対するメッセージをお願いします。

zhinbou5大学って自己形成の場として、非常に良い場所ですね。せっかくそういう場があるのに、高校のときに私はこの科目が好きだったから、これからもこれをやりたい、というような、大学に入ってすぐに、もう自分の道を決めちゃっている人が少なくない。例えば理学部とか、工学部で、何をやりたいとかもう最初から決めてそっちへ向かってるという人は、それはそれで良いのかもしれない。でもせっかく情文に入ったんだから、そういうことではなくて……。例えばね、「高校のときの入試の成績って、僕、数学とても良かったんだよね。で、情文来たんだよね」とかさ。そういう人っているかもしれない。でも、高校のとき数学好きだったかもしれないけど、その人の本当の能力ってそうじゃないかもしれない。だから、自分が本当に好きなものは何か、何をやりたいのか、っていうのは、もう一回、大学入って考え直してもらえるといいな。それと、単位取るために勉強している人が一杯いるんだよ。単位はもちろん、卒業のために必要なんだけど、単位取るための勉強って、絶対に面白くないじゃん。それよりは、勉強した中ではこれが面白かったな、っていうのをもっと深く見ていく。そういう姿勢も大事だなって思います。深みにはまっていってしまって、他の単位取れなくなるってのも困るんだけど、でもまあ、それもね。楽しくてそっちに行くんだったらそれはそれで……。

もう一つ。情文に入って、自分を他学部の学生と比較して、専門的に知っていることが少ないって感じてしまう人がいるんですよね。幅広く学んでいる分だけ、浅くなっているのかもしれない。確かにそういう一面はあります。じゃあどちらが良いのか?尖がった勉強をした方が良いのか、広く勉強した方が良いのか。それはどっちがどっちとも言いづらいですけれども、修士まで含めて6年間で修得しようと思えば、広いし、深いところもあるような人間ができ上がるんじゃないのかなって思うんですよね。

―1つを深めつつ、一緒に周りも深めるということですか。

そうそう。なので、僕は大学院へ行くことを皆さんに勧めているんですよ。確かに、情文は就職が良いので、4年で就職しちゃおうかっていう人は少なくないんだけど、できれば大学院に行ってそういう風になってほしいなと思いますね。

―高校生に対するメッセージをお願いします。

受験勉強をしていると、英語、数学、国語という風に科目ごとに分かれていて、内容が完全に切れているんですよね。縦割りになってしまっている。まあ物理とか、数学だとかは近いかもしれないし、社会の科目で世界史と日本史とか、地理とかその辺は関連が少しあると思うんですけど、そういう横の関連をあんまり高校生って、勉強はしてないですよね。でも情文みたいなところに来ると、横の関連が見えるわけですよ。科目を横断して勉強できるわけですよ。なので、高校生のうちからそういうことを意識しながら勉強すると良いと思うけれども、受験勉強の中でそれをやるのも難しいかもしれない。ただ、大学に入ったら、そんな風に横断的な勉強ができるんだな、っていうことを頭の隅に置いておいてほしいですね。あと、高校のときに、自分が好きだった科目が、大学に入って、本当に自分がやりたい科目かどうかは分からない。そこは、大学へ入ってからもう一回、よく自分を見つめ直した方が良いと思います。例えば、情文だとね、『人類生存のための科学』という科目があって、何のために僕は勉強するんだろうというのを考えさせられるわけですね。だから、高校生のうちに勉強していて、疲れ果てて、大学に入って、もういいやってならないで、そこで今まで自分が勉強してきたことをね。つなぎ合わせてほしいなって、大学に入るのを楽しみに、勉強してください(笑)。

高校のときに、1年遅れるとか、大学のときに1年遅れるとか、高校生でも大学生でもそうなんですけど、別に構わないので、できたら海外に行こうか。前に私がいた大学の研究室の学生で、高校2年のときに1年間アメリカに居て、帰ってきて大学に入ってからも、英語はいろんなところで使っていて。就職してからもシンガポールで、金融関係の仕事とかをやっている人がいて。そういう人たちって、やっぱり意識が違うんですよね。世界を見る意識が違うというかね。なので、そういう風に高校生のときでもいいし、大学生になってからでもいいので、ちょっと外を見ましょう。

神保先生のインタビューは以上です。

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