イベント

情文カフェ第20回:見⊃″らレヽー⊂ゃゑ気カゞ出ナょレヽ? ―流暢性がさまざまな主観的判断に及ぼす影響―

2013年7月11日

情報文化学部はいわゆる理系・文系両方の教員が集まっているところですが,それはとりもなおさず多様な領域の相互作用の中で生まれる新たな発見のシーズが隠れていることを意味しています.そのようなシーズを顕在化させること,また話し手,聞き手双方がもっているセレンディピティをも顕在化させることを目指して,開いているカフェが情文カフェです.

原則として第4水曜日18時から,情報文化学部(全学教育棟北側)2階Phononで行っています.参加自由なので気楽にどうぞ.

日時:2013年7月24日(水),18時00分より
場所:情報文化学部(共通教育棟北側)2階Phonon
スピーカー:北神 慎司 准教授(環境学研究科)
タイトル:

見⊃″らレヽー⊂ゃゑ気カゞ出ナょレヽ?
―流暢性がさまざまな主観的判断に及ぼす影響―

概要:
上に書かれているメインタイトルは,いわゆるギャル文字というもので,「見づらいとやる気が出ない?」と書かれてあるのですが,このように見づらかったり,読みづらかったりすることを,心理学では「流暢性(fluency)が低い」という言い方をします.つまり,流暢性とは「刺激に対する主観的な情報処理の速さや容易さ」を意味し,流暢性が高かったり,低かったりすることで,さまざまな判断が(それとなく)影響を受けることが多くの研究によって明らかとなっています.今回の情文カフェでは,ここ数年で行った実験のデータを交えつつ,流暢性の機能や役割について話題提供させていただきます.

 

参加者の感想

Cafe20_1今回のお話のタイトルにもなっている「流暢性」は、私にとって新しい言葉でした。初めてこの言葉を聞いた時は、言葉の印象から、私たちの意識とは関係なく起こる、社会現象のようなものだと思っていました。しかし、正しくは主観的な感覚の一種で、意図的な操作が可能であると知り、驚きました。流暢性が高いとは、例えば文字色の明度が高い、あるいは文字の大きさが大きいなどの理由で「見やすい」状態を言います。この流暢性に関しての面白い実験を聞きました。実験の被験者に、問題が書かれた2つの文章を見せます。それらには全く同じ問題が書かれていますが、文字の大きさに10%の差があります。その2つを見せ、直感的に学習のしやすさを判断させたところ、文字が大きい方が学習しやすく感じるという答えを得ました。ところが、実際にそれぞれの文字の大きさで書かれた問題のテストをしたところ、成績はほとんど変わらなかったそうです。つまり、文字の大きさを見た時には流暢性が高い方が取り組みやすいと感じられたが、それはあくまでも主観的であり、それにより結果が左右されるわけではなかったということでした。ただ、新しいことや難しいことに取り組む際の取っ掛かりとしては、見やすく分かりやすい状態にすることは効果的なので、流暢性が高いと取り組みやすいだろうという説明でした。このように、流暢性を高く設定することで、物事を簡略化して考えることができます。この方法をヒューリスティックと言い、逆に、流暢性が低く、深く論理的に考える方法をシステマティックと言うそうです。例えばスーパーで売っている食品などは流暢性の高い宣伝をすることで、親しみが湧き、消費者が手に取りやすいという結果になりやすく、この時は、ヒューリスティックによるバイアスが生じています。逆に、デパートの高級食品売り場などで売っている珍しいものを宣伝したい場合には、あえて流暢性を低くすることで、より希少であるように見せるという方法です。この時生じているのが、システマティックによるバイアスです。この説明に対しては、なるほどと思った反面、少し疑問にも思いました。実際に購入する立場で考えると、いくら希少価値が高いように見えたとしても、見えにくい、分かりづらい写真や説明文に対してはそもそも目が行かず、その内容を把握する前に関心を失ってしまう場合が多いのではないかと感じたからです。だから、流暢性を低くし過ぎては逆効果になってしまう可能性もあり、その調節を厳密に行うことが必要だと考えていました。すると、同じような疑問を持たれた方がおり、質問されたところ、流暢性はあくまで判断の手がかりとして扱うべきであり、本当の結果は課題そのものに依存するという説明がされました。Cafe20_2
北神先生、興味深いお話をありがとうございました。
(自然情報学科 花木真美)

 

資料
 参考文献一覧(PDFへのリンク)

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