インタビュー
全力疾走したその先に見えるもの(3)
一つのものを、突き詰める―情報文化学部長 川口 潤
2010年8月26日
川口 潤(かわぐち じゅん)教授
本年度から情報文化学部の学部長に就任された川口教授。
そんな川口教授が高校・大学生活を通して感じた事、
得た物について、ご自身の経験談を交えつつ
お話ししていただきました。
―先生の学生時代についてお聞かせ頂けませんか?
高校生の頃はギターばっかり弾いていたんで・・・、まあそれはよかったなと思うけど。受験勉強ももちろん大事なんだけど、何か一つについて集中してやっておく経験ってすごく大事じゃないかなー、と思う。ギター弾いてた頃は夢の中で、フレットのこことこことここ押さえたらこんな音でるんちゃうかなーとか、そんなことをずーっと考えてたことがあるんだけど、それが楽しいんよ。布団入って寝る前にそういうこと考えられるというのが。
集中してやっていると、何かが見えてくる時が来る。例えばギターは練習してるともちろんちょっとずつは上手くなる。なるんだけど、ずーっと続けていると急に上手くなる時がある。だから何かやっていても途中で諦めないでそれをガーッと突き詰める。それは大学でも一緒。何かすごく興味を持ったことがあったら突き詰める。突き詰めるとその先があるので。
僕の大学時代は1970年代半ばから後半で、ちょうど大学闘争が落ち着いた時代。本はたくさん読んだかな、ちょっと難しめの本の原著とか。デカルトも読んだし、物理学の本も読んだ。学生の間には解説書ではなく原著を読むことをぜひ勧めます。
もちろんこの頃から心理学に興味があって、特に実験する方の心理学に興味があったんだけど、それは人間を対象にした心理学の実験て何だ?っていう興味からだったんだよね。ただ、大学院の修士の時にこれって役に立つのか?って自分の中で悩んで、就職しようとも思ったけど、最終的にこの道で行こうと開き直って大学院を続けた。まあ何が起こるか分からないから、今できることはなんでもチャレンジするといいと思う。
当時、僕は自分が何をやるかなんてよく分からなかった。卒業先は自分の能力を見極めて考えなさい、と言うけれど、それってそう簡単なことではないよなあ、と当時思ったりもした。銀行に就職して数年してから、大学に戻ってきた友人もいたしね。
早く自分の将来を決めた方がいいという人も言うけど、早く決めた人がすごくなったかと言えば必ずしもそうではない。役に立つかどうかは長い目で見るということが大事で、ちゃんとやっていれば必ず役に立つ。いざという時にしっかりできる力を身につけておくことが大事かな。
例えば、心理学に「注意の研究」というのがあって、その中に相手の視線に注意が引っ張られている、言語を介さないコミュニケーションをしている、といったことを研究する分野があるのだけれど、人間の視覚的注意の向きをどうやって測定するかを考えた人がいた。その研究は基礎的なものだったから、すぐに役に立つのか?ということになったんだけど、その20年後にその測定方法が自閉症の研究に役立つことがわかった。まさか最初の非常に基礎的な研究がこんな風に役立つようになるとはね。なので何事も長い目で見る、ということが大事です。そして一見別々のことがらをつなぐ能力。その辺りを情文生には身につけてもらえるといいかな。(続く)