インタビュー

大学時代が最も伸びる(1)
—自然情報学科長 畔上 秀幸

2011年3月11日

畔上 秀幸(あぜがみ ひでゆき)教授

長野県出身.東京大学にて工学博士を取得した後,

東京大学,豊橋技術科学大学にて研究を続け,

現在,大学院情報科学研究科・情報文化学部教授.

自然情報学科長でもある先生の専門分野は.関数

解析の応用.特に数値解析,形状・位相最適化,

逆問題,バイオメカニクスなど.

—先生がお考えになっている自然情報学科とは

自然情報学科は文理融合である情報文化学部の理系的な部分を強調した学科であるといえると思います.理系というと,これまでの理学,工学,医学などの広い分野がありますが,コンピュータという人類が手に入れた新しい情報処理の能力を使って,新しい学問領域を切り拓いていくところだと思っています.

—先生は複雑系の先生ですが,複雑系ではどのような研究をされているのですか

複雑システム系は,自然情報学科の縮図のようなところともいえます.自然情報学科には数理情報系,環境システム系,それから我々の複雑システム系と3つの系があります.数理情報系では数学を基礎にして,情報の原理や応用について教育と研究が行われています.環境システム系では情報処理の能力を生態系などのグローバルなシステムの解明や様々な問題の解決に使っています.複雑システム系はそれらの中間にあって,情報処理の能力を生かして物理学,化学,生物学,工学の新しい可能性を切り拓こうとしているところです.

複雑系で特徴的な研究というと,有田先生の人工知能に関する研究や,新しい発想の下で様々なシミュレーションを展開していく,鈴木泰博先生の研究などが挙げられると思います.

—自然情報学科の学生にはどのような姿勢を望まれますか

まずは,広く沢山の事を勉強する.今,新しい研究や,注目されて賞をもらうような研究は,そのおおくは一つの専門分野だけから立ち上がってきた内容ではなく,新しいものとのコラボレーションによって成し遂げられたものです.研究というのは新しい発見をしていくもの.つまり,新しいことというのは様々な融合の中にあると思うんですよね.自然情報学科,また情報文化学部はそういう学際的な部分をしっかりやっているので,そういう発想力,新しいものを生み出す能力は身につけられるんじゃないかなと思って期待しています.

—先生が大学時代に打ち込んだことを教えて頂けますか

高専の時には僕はワンダーフォーゲル部で山に登っていました.北アルプス行ったり南アルプス行ったり,テントを担いで四国や伊豆7島を放浪したり,後は夜中中歩いて海を見に行ったりなんかもしていました.

ワンダーフォーゲルの活動もしつつ,僕は美術部で油絵を描いていて,一般の公募展に出展していました.本屋の2階で個展もさせてもらいました.その頃は画家という選択肢も僕の中にはありました.毎年公募展に合わせて自分の気持ちを昂ぶらせて一つ一つ作品を作っていたんです.

ところが,それが上手くいってる時はいいんですけど,なかなかイメージが出てこないときの苦しみは,どんなことでもそうですがつらく感じられたんですよね.それとその作品のよしあしが見る側の主観に左右されてしまうことが,若かったせいかつらく思えたんです.

その反動ではないですが,数学は誰が何と言おうと客観的に正しいことは正しいといえるので,いいなあと思ってました.結局,今僕は数学側で仕事をしてますけれど,二十歳くらいの頃は芸術家になろうと思ってたくらい反対側にいた人間でした.

—今も画は描かれているのですか

娘が生まれるまでは描いていました.生まれたときの感動を.

—ワンダーフォーゲル部で行ったところで,画を描いたりといったことは

そう.ある時山へ登ってたら嵐に見舞われて,4,5人で行ったのかな.びしょ濡れになって外輪山の中の湿地帯にかけずり降りたんです.そこが,また静かで天国みたいなところで.外輪山に登ったものだけがたどり着ける秘境だったんです.嵐に見舞われてどうしようもないときに,予想もしなかったところに辿り着いた時の呆然となった瞬間を,襖ほどの大きな画にしてみたりとか.まあ今思えば幼稚な画で,今となっては恥ずかしくて見られないかもしれないけれど.

美しいものが好きで,理論においても美しさを求めています.できればシンプルで,誰もが美しいと思うようなものに憧れています.

—そこに研究に通ずるものがあるのですね

と,僕は思っているんだけれどね.

インタビューの後半はこちらです.

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