インタビュー

keep thinking simple(1)
-社会システム情報学科長 黒田由彦

2014年8月11日

黒田 由彦(くろだ よしひこ)教授

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名古屋大学文学部助手、椙山女学園大学

講師を経た後に、情報文化学部の前身

である教養部での講師を務め、その後

名古屋大学情報文化学部助手、名古屋

大学大学院環境学研究科准教授を経て、

現在は名古屋大学大学院環境学研究科

にて教授を務める。

社会システム情報学科長である先生の研究分野は、地域社会学・都市社会学。

ー はじめに先生の研究分野について教えてください。

地域社会学をやっています。たとえば、日本だったらどこでもだいたい同じような生活水準・質だが、地域によって個性がありスタイルが違う。行政はもちろん、人口規模などが同じような地域でも、そこでのサービスの水準や、どういう文化的な活動が盛んかに、かなり差がある。その差って何から生まれるのか、というのが私の問題意識です。

行政の枠組みは同じにもかかわらずサービスが異なるのは、いろいろな要因が絡むんですけど、その地域の歴史だったり文化だったり、あるいはその地域での人と人との関係のあり方だったりする。

ひとつの例として「お祭り」という現象をとりあげましょう。「お祭り」は、別になくてもいいものだけれど、それが地域アイデンティティのひとつの源泉になっていたりする。「お祭り」は出来事なので、大事にしないと続かない。でも、地域の人々が寄ってたかってそのお祭りを作りだすと、そこに観光客がやってきてお金を落としていき、地域の経済がうまく回る、というようなことがありうる。片や全然そういう文化がない地域がある。やろうと思っていてもできないところがある。その差はどこから生まれるのだろうか、というのが研究のテーマです。

ー この差によって何がわかるのでしょうか。

たとえば、東日本大震災でさまざまな地域が被害を受けましたが、翌日から始まる復興のスピード、内容には地域差があった。早く復興したいと思う気持ちは一緒ですし、災害救助の制度は一律に適用されるのに、被災の程度が同様であっても地域によって差が生まれる。被災の程度には還元しきれない理由があるんですね。

たとえば津波で神社が流されて地域はたくさんあります。復旧・復興で大変なときにもかかわらずいち早く神社の再建に取り組んだところもあれば、その目途さえたっていないところもあります。地域の人々の力を結集させる仕組みがあるかどうかで差があるのですね。

どうすれば地域の人々の力を結集する仕組みをつくりだせるのか。それがわかれば、復興にも生かしていけるのではないか。

ー 研究の対象地域は?

日本はもちろんですが、他の国、たとえば中国やアメリカも対象にしてきました。
どこであっても生活しているのは人間なんでね、人間が作る社会ってそれほど差はないと思う。形式は同じで内容(文化)が違うだけなんです。たとえば、食事の際にお箸使うか、それともスプーン使うか、ということがありますが、結局は何かを使って食べているでしょ。でも、お箸か、スプーンか、それが文化で大事ですが。

ー 大学生に対して推奨したいことは?

1DSC_1068あなたたちの4年間は貴重なんです。 先生が言ったらマズイかもしれませんが、遊びすぎたと思ったらそれでもいいのね。この4年間しかできないことであれば。いずれにせよ、自分の学生時代振り返ると、あのときの4年間は本当に貴重だったと思うよ。

1年生のガイダンスで私は「その場にいることのメリットを生かしたほうがいい」という話をしました。

たとえば、実を言うと、私は講義をするのが嫌いだったんです。4月になって講義が始まると憂鬱で。でも、それって不幸じゃない? 僕は講義をすることが仕事で、人生の中で講義をしている時間はすごく長いのに。

でも、あるとき好きになった。ひとつのきっかけは、学生が「先生って講義室に入ってくるとき、下向いて『嫌だ-!』って雰囲気が出ていますよ。だけど、話し始めるとだんだんテンション上がって、最後にはウワーと盛り上がっていく」と言われたことです。そうか、案外楽しく話しているんだ、だったら好きになろう、と。

もうひとつは、やっぱり年をとりましたね。私は57歳ですが、40歳ぐらいまでは人生ってまだまだあると思っていたんですね。でも、折り返し地点、40歳を過ぎるとすごく早いんです。マラソンなどで半分過ぎたら経つ時間が早く感じるようなことあるじゃない? この大学の定年は65歳なので、それを考えたらもうあんまり先はない。そこで考えた。大学辞めたらこんなおじさんの話を誰が聞いてくれるのか、と。講義って僕が何をしゃべっても、みなさん話を聴いてくれますよね。そう考えたら、否応なく人に話を聴かせられる時間を大事にしようと思ったのね。

で、皆さんに今、人生の中で自分がどういう状況にあるかということを考えてほしい。今しかできないことは何か。そして今自分がやって楽しいことは何か。アルバイトをするのもいいが、ちょっともったいないよね。お金を稼いで何かするというのがあればいいが、貯金するとかだったら、時間がもったいないよね。お金を稼ぐのは将来できるでしょ。今しかできないことをやったらどうか、ということです。

インタビューの後半はこちらです。

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